清らかに

若手芸人の僕が、やらなくなったネタを埋葬していきます。

新しいボロ小屋

 

 

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設定 

人口合わせて100人もいない村

 

登場人物

白髪のおじさん 

優しそうな50代のおじさん。背筋は伸びているのでまだバリバリだ。

サナエ 

都会で働いている20代前半の女性。田舎者でとても人がいい。

 

視点

サナエ

 

 

「やっぱり私は田舎の人間だなー。」

 

サナエは雑木林を歩きながら思う。

 

九州の田舎から出てきて、都内のモデルの卵として活動していた。まだ東京歴半年だ。

 

東京という街は本当に汚い、人も街も。

 

そして昨日、日常の忙しなさに耐えきれず、

 

「仕事を3日間休ませてください!」とマネージャーに連絡して、そこから携帯の電源は切っている。

 

知らない電車に乗り、どこかの終電についた。

 

無人の駅、夕方、歩いている人も見えない、この草の匂い。

 

私の田舎、私のホーム、誰にも邪魔されたくない。

 

30分くらい歩くと、おじさんが一人、ちょうど農作業を終えて帰ろうとしていた。

 

おじさんは満点の笑顔で話しかけてくれた。

 

おじさん「こんにちわー。こんな田舎で若い女の子一人でどしたの?」

 

サナエは事情を隠さず話す。

 

おじさん「東京から昨日思い立って来たの!なんでまた?」

 

サナエ「東京は人も多いし、嫌なんです。」

 

おじさん「ほうか。ほうか。。大変なんじゃなぁ。お嬢ちゃんどこに泊まるんじゃ?」

 

そういえば何も決めていなかった。

 

サナエ「まだ何も。」

 

おじさん「泊まっていきんさいよ!」

 

田舎の人に悪い人はいない。

 

サナエ「いいんですか?ありがとうございます!」

 

おじさん「ここがわしの家じゃけーの。」

 

後ろを見るとすぐ家が一軒あり、そこが家らしい。徒歩10mだ。ありがたい。

 

サナエ「お邪魔させてもらいます。」

 

おじさん「家誰もおらんし部屋余っとるし全然いいよ!」

 

サナエ「あれ?お嫁さんとかは?」

 

おじさん「嫁?おらんおらん。わし50歳じゃけど。女と付き合ったこともないでー。この村人口も少ないし、女も70過ぎたババァしかおらんけぇな。ずーっと一人よ。。。」

 

クーラーの音がやたら大きく聞こえる。

 

おじさん「ん。まぁ入りんさい。なんか食う?ここら辺は鮎がボッケ取れるけのぉー。食いいな。」

 

サナエ「鮎!!めっちゃ食べたいです。」

 

久しぶりの田舎の料理。しかも鮎!大好物だ。

 

サナエ「めちゃくちゃ身がしっかりしてて美味しいです!」

 

おじさん「ほうかほうか。」

 

サナエ「毎日これがいいです!本当にうまい!」

 

おじさん「ほうかよかった。」

 

サナエ「おじさんは食べないんですか?」

 

おじさん「わし?わしはいらんよ。もう鮎食い過ぎてゴム噛んどる気しかせんけーの」

 

暖房の音以外。何も聞こえない。サナエも動けない。

 

おじさん「毎日これでもいいか。」

 

気まずい。なんとか話題を変えないと。

いつも東京でやっているキャバクラのバイトがここで役に立つとは。。。

 

サナエ「 そういえば名前まだ聞いてなかったですね!ちなみに私はサナエです!教えてください!”お兄さん”はなんていう名前なんですか?田舎の人って名前カッコよさそうですよね!珍しいというか!気になります!」

 

 

おじさん「山平こん平太って言うんよ。」

 

サナエは必死のベロを噛んだ。笑いをこらえるのに必死だった。

 

おじさん「サナエさん。田舎のいいところ3つ言ってみて」

 

やばい。この3つは外せない!おじさんが起こりかけている!慎重に答える

 

サナエ「ご飯が美味しい!」

 

おじさん「同じものばっかで栄養失調になるよ」

 

しまったテンパった!次はなんとかしないと

 

サナエ「のんびりしている」

 

おじさん「農場の人間は朝4時起きよ!」

 

二つ外した。

 

サナエ「空気が美味しい!!」

 

おじさん「肥料の臭いで鼻ひん曲がるよ。」

 

遠くでセミが鳴く音が聞こえる気がする。 

 

 

おじさん「帰ってくれ」

 

サナエ「わかりました」

 

そういうとサナエはすぐに玄関を出てタクシーで駅まで帰り、すぐに東京に戻った。

 

田舎なんて糞食らえ。